==================================================================== ■1.アリスマジック ~ 東の国の雨月郷 バックストーリー ====================================================================                - 0 -  シトシトと降り続く雨の中、微かに風の予兆が聞こえた。  琥珀色の蝶が舞い踊る森の向こう側、宵闇の中に佇む少女。  その目は空を見つめ。    ぽつ......ぽつ......と灯りがともり始めた。                - 1 -  東のエデンの人里離れた山の中。  博麗神社は、そんな辺境にあった。  この山は、元々は人間は棲んでいない、今も多くは決して足を踏み入  れない場所で、人々には幻想郷と呼ばれていた。  幻想郷は、今も相変わらず人間以外の生き物と、ほんの少しの人間が  自由に闊歩していたのだった。    ある秋の日。誰にも気付かれることのなかった少女の声は、風に乗っ  て博麗神社にも届いたらしい。               - 2 -  博麗神社の巫女、博麗霊夢は平穏な毎日を送っていた。  滅多に参拝客が訪れないこの神社は、退屈だったり退屈じゃなかった  りして、楽しく暮らしているようである。    そんな秋の日、霊夢はひとつ(?)の夢をみた。    雨の中、空を見つめた少女(巫女?)がぽつりと呟く......  「誰かが助けに来てくれればいいのに……」    寂れた小さな神社。そこで祈る少女(またまた巫女?)。  「どうかご先祖様に逢わせてください……」    ガバと起きた時には、もう外は明るい。  不思議な霊夢を視た、となんだか寝起きが良くない。  霊夢の視たそれは考えるまでもなく神託(霊夢)だった。  霊夢「なんかよくわからないけど、助けてって言われちゃ仕方ない  ……よね」  夢に視た記憶と持ち前の勘を頼りに、  早朝の光の中を翔けてゆく......               - 3 -  森の住人である普通の少女、霧雨魔理沙は平穏な毎日を送っていた。  時には家に閉じこもり魔法研究に没頭し、時には油を売って歩いたり  して、たのしく暮らしているようである。  魔法の森に棲み、魔法使いをやっている少女は既にアイツがいなくなっ  た事に気付いていた。  アイツっていうのはもちろんアリスのことだ。   魔理沙「アイツも都会が恋しくなって故郷に帰ったのかもしれないな」  魔法使い(種族)になった今も人間とさほど変わらない生活をしている  彼女はきっと人間と変わらず郷愁に煽られたのだろうと、そんなことを  考えていた。  そんな折、早朝にまっすぐ宛もなく翔んでいた少女は霊夢が仕事姿で飛ん  でいくのを見かけた。     魔理沙「あいつが動き出したってことは、そういうことか」  少女も、何かめぼしい物が無いか探しに行くかのように出発した。  むしろ探しに行ったのだった。                - 4 -  その山は、今日も雨に包まれていた。  月が満ちてくると必ずさあさあと雨が降った。  多くのヒトが偽りの生活を営む世界に、少女は居た。  何かを待ち受けるように。  まだ、決意を固めた訳ではない。それでも。  それは叛逆のため。叛逆そのもののため。  決して人々のためではなかったかも知れない。  そして、なかなかハレの来ないその世界にも、「彼女」はいなかった。 ====================================================================